◆たった3か月で
毎日、仲間の新人編集者やカメラマンといっしょに張り切って取材活動に飛び回っていたのですが、ある夜、東京の本社から電話がありました。
「取材はもういいから、あしたにでも全員、東京に帰ってくるように」
意味が分かりません。
「何があったんですか?」
「じつは、雑誌の創刊に必要な資金が足りないことが分かり、創刊はとりやめになった」
みんなでがっかりして東京の会社に帰ってくると、もっとがっかりさせられる社長の決断が待っていました。
「このたび、会社をたたむことにしました」
こうして、夢の編集者生活はたった3か月ほどで幕をとじたのです。
再び、無職の身になったとき、新しい仕事先を紹介してくれたのは、ほんの短い間ではありましたが、つぶれた会社の仕事を通じて親しくなった、デザイン会社の人でした。
「新聞社の出版局というところで、単行本の編集者のアルバイトを探しているんだ。よかったらきみ、いってみないか?」
それで、訪ねていったのが、ある全国系の新聞社の出版局でした。アルバイトの身とはいえ、ベテランの編集者の下で、編集の仕事を思い切り学べる、絶好のチャンスに恵まれたのです。仕事は最高に楽しかったです。