そんなころ、一人の男が、ほこりっぽい道を、とぼとぼと、歩いていました。
色あせた軍服に、重そうなリュック。こしには、だらんと、剣をぶらさげ、戦いでいためた足をひきずっています。
疲れ切ってはいましたが、まだ、若者のようです。
そして、日焼けと、ぶしょうひげでかくれていなければ、青空のような目をした、なかなかのハンサムでした。
男の名前はセムといいました。
セムは、戦争のたびに、あっちこっちの軍で、お金でやとわれて戦う傭兵(ようへい)でした。
だから、戦争の間は、なかなかいいかせぎがありましたが、戦争が終わると、もう、仕事はなくなりました。
「こまったことだ。が、まあ、いいや。今までためてきた金で、町で商売でも始めよう」
毎日、戦いに明け暮れ、目の前でたくさんの人が死んでいくのを見るうちに、セムは、兵隊のくらしに、ほとほと、いや気がさしていたのです。