あとのまつりです。指輪はセムの指に、ひゅっと、すいつき、取ろうにも取れません。
「ひひひひ・・・」
背中で魔女が笑います。
セムは剣のつかに手をかけて、ふり向きました。
「落ち着きな、兵隊さん。決して、悪い話じゃないんだから」
魔女の血のような目に見つめられると、セムの体はこおりつき、動けなくなりました。
魔女は言いました。
「その指輪は、お前さんの願いを、何でもかなえてくれるよ。一言、それに向かって、たのむだけでね。それで、お前さんは王様にだって、大金持ちにだってなれるんだよ。どうだい、いい話だろう?」
「お断りだ! ほっといてくれ!」
と、言いたいのに、息がつまって、声が出ません。
「その代わりと言っちゃ何だが、死んだ後は、地獄のわが家に来てもらうよ。なあに、心配はいらない。ちょいと、楽な仕事をしてもらうだけさ。それとも、魔王様のおやしきで下働きがいいかい?」
「う、う、う」
「いやだ」と、首をふろうにも、首が回りません。