でも、どんなに心にちかっても、思いどおりにはなかなかいきません。トータッチジャンプはなんとかできるようになったソラでしたが、スプリットジャンプはオーディション前日になっても、一度も成功しませんでした。
最後の練習となった公園でも、何度もチャレンジしました。でも、足をひらく前に地面に足がついてしまうのです。
「・・・どうしよう」
夜空にはキラキラと星がかがやいているのに、ソラは今にも雨が降りだしそうな顔でしゃがみこみました。
「スプリットジャンプ、やめちゃえば?」
ミリンダがさらりと言いました。
「だって2種類飛ばないとダメなんだよ」
「スマイルジャンプにしちゃえばいいじゃん」
「スマイルジャンプ? そんな技あるの?」
「まっすぐ飛んで、そこでスマイル!」
ミリンダがやってみせます。
「ワッ! かっこいい!」
ソラの顔がパッと明るくなりました。
「ソラはスマイルチャンピョンでしょ? 最高の笑顔を見せればいいのよ」
「ホントにそれでいいの? みんなスプリットジャンプするでしょ?」
「ソラが最高にかがやくジャンプをした方が、ステキだと思うけど」
「・・・じゃぁ、こんなのどう?」
ソラはジャンプして、目をまん丸にしてスマイルしました。
「うん! いいわぁ! でも、なんか足りないなぁ・・・。う〜ん、投げキッスしてみて?」
「投げキッス?・・・こんな感じ?」
ソラは、飛んで、まん丸目のスマイルで投げキッスをし、着地しました。
「オーサム!! ソラ、最高!!」
「じゃ、これは?」
ソラは、飛んで、両手でほほをさわってスマイル、両手を高くあげて着地しました。
「ソラ! 最高! 人と比べちゃダメ。自分マックスで勝負よ!」
ソラはスマイルジャンプを練習し続けました。「人と比べるのではなく、自分マックスで勝負する」と、心の中で何度もくり返しました。