第二話 ほんとの恋
恋人の瑠衣が「女友だちと川越に遊びに行った💛川越サイコー💛」と、奏多にメールをよこした。
添付写真には、半世紀前もきっと同じ風景だったんだろうな、と思える郷愁を誘う街並みが写っていた。
翌日、
「これ、お土産!」
瑠衣が奏多に差し出したのは、鯛のおもちゃだった。
「なにこれ?」
奏多がそっけなく言うと、
「おみくじなのよ。縁結びの神様がいる神社。そこの有名なおみくじ!」
正月でさえ、そんなものを引いた覚えのない奏多だが、てのひらに乗っけられた『鯛』には、興味を持った。
赤い小さな鯛の、尾の部分から、確かにおみくじが飛び出している。
「ね、可愛いでしょ? 境内に釣り竿があってね、それで釣り上げた『魚』を連れて帰るの。さぁ、おみくじ、開けてみて」
奏多がおみくじを尾から引っ張り出すと、「大吉」だった。
「おっし! いい予感がしてきたぞー」
このおみくじのアイディアを、自分の商売に活かせないだろうか? と、奏多は考えていた。
奏多の店は、公園の片隅にある小さな『たいやき屋』。
週末は、家族連れのお客でそこそこ繁盛するが、「もう一発、当てたい!」と、つねづね思っていたんだ。
「瑠衣、おみくじ入りのたいやきって、どうかな?」
「いいね。女子にウケそう」