そのころ、さんばしでは、男の人たちがつりをしていました。
なんと、タロウごいは、その中の、せのたかい男の人に、つりあげられてしまったのです!
タロウごいをつり上げた男の人はびっくり。
「なんだ、こりゃ。あれれ、こいのぼりじゃないか。」
ゴミがひっかかったと思った男の人は、タロウごいをすてようとして、そのもように気がつきました。
ひろげてみると、かいじゅうのえがかいてあります。
「うちのたろうが、大すきでいつもかいている、かいじゅうのえだ。もしかしたら、これはたろうのつくったこいのぼりかもしれないぞ」
男の人は、その日つったさなかといっしょに、タロウごいをクーラーボックスに入れて、うちへかえりました。
「おとうさん、おかえりなさい! きょうはどんなおさかなをつってきたの?」
「せかいでたったいっぴきの、すてきなさかなをつってきたよ」
「うわあ、早く見せて!」
クーラーボックスから出てきたさかなを見て、たろうはびっくり!
「ぼくの、いなくなったこいのぼりだ!」
たろうは、川のそばをとおるときに、じぶんのこいのぼりを見るのがたのしみでした。
でも、なんにちかまえから、いなくなってしまって、がっかりしていたのです。
お父さんは、タロウごいをきれいにあらって、ドライヤーでかわかしました。
「こんなにあちこちやぶれちゃって。すごいぼうけん、してきたんだね」
たろうは、やぶれたところをセロハンテープでくっつけます。
そのあと、お父さんがひもをつけて、タロウごいを、ものほしざおにくくりつけました。
タロウごいは、かぜをいっぱいうけて、ひらひらおよぎます。
〈あちこちいけなくても、やっぱりおいらは、かぜの中をおよぐのがいいなあ〉
タロウごいのぼうけん(3/3)
文と絵・山庭さくら