タロウごいのぼうけん(3/3)

文と絵・山庭さくら

そのころ、さんばしでは、男の人たちがつりをしていました。
なんと、タロウごいは、その中の、せのたかい男の人に、つりあげられてしまったのです!
タロウごいをつり上げた男の人はびっくり。
「なんだ、こりゃ。あれれ、こいのぼりじゃないか。」
Sタロウごい3場面ゴミがひっかかったと思った男の人は、タロウごいをすてようとして、そのもように気がつきました。
ひろげてみると、かいじゅうのえがかいてあります。
「うちのたろうが、大すきでいつもかいている、かいじゅうのえだ。もしかしたら、これはたろうのつくったこいのぼりかもしれないぞ」
男の人は、その日つったさなかといっしょに、タロウごいをクーラーボックスに入れて、うちへかえりました。
「おとうさん、おかえりなさい! きょうはどんなおさかなをつってきたの?」
「せかいでたったいっぴきの、すてきなさかなをつってきたよ」
「うわあ、早く見せて!」
クーラーボックスから出てきたさかなを見て、たろうはびっくり!
「ぼくの、いなくなったこいのぼりだ!」
たろうは、川のそばをとおるときに、じぶんのこいのぼりを見るのがたのしみでした。
でも、なんにちかまえから、いなくなってしまって、がっかりしていたのです。
お父さんは、タロウごいをきれいにあらって、ドライヤーでかわかしました。
「こんなにあちこちやぶれちゃって。すごいぼうけん、してきたんだね」
たろうは、やぶれたところをセロハンテープでくっつけます。
そのあと、お父さんがひもをつけて、タロウごいを、ものほしざおにくくりつけました。
タロウごいは、かぜをいっぱいうけて、ひらひらおよぎます。
〈あちこちいけなくても、やっぱりおいらは、かぜの中をおよぐのがいいなあ〉

宇都宮みどり (山庭さくら) について

宇都宮みどり(山庭さくら) 愛媛県出身。大好きな童話作家は浜田広助。 図書館での読み聞かせ、児童養護施設でのボランティア、大学病院の小児科でのボランティアでの読み聞かせを行ってきて、童話や絵本の大切さを実感。 2006年に出版した『ウータンタンのおはなし』は、大分県の夏休み課題図書に選ばれる。 その後、依頼で『不思議なコウモリ』や『シッポでさよなら』などを創作。これまで作った作品は20以上。読み終えた後に、心がほっこりする童話を書きつづけている。 HP:幸せつなぎスト