「いーけないんだ、いけないんだ! テツヤが、つよしからチョコレートとった!」
ぼくは、パッと姿を表して、どなってやった。
チョコレートの包みを開けようとしていたテツヤが、びくっとしてこっちを見た。
「テツヤのママにいいつけてやる! おばさ~~ん! テツヤが、つよしからチョコレートとったーーー! 手にもってるよーーー!」
ぼくは、さけびながら、マンションの表に向かって走り出した。
「ま、まて、おまえ!」
テツヤがあわてて追ってこようとする。
あいつめ、チョコレートを持ったままじゃないか。
ショウコインメツしてくれなきゃ、こまる。
「おばさん、みてーー! テツヤがチョコレートつよしからとったーーー! 手に、持もってるよーーー!」
ぼくはふり返って、ひっしでさけんだ。チョコレートを持ってこられちゃ、この作戦は失敗だ。
テツヤがあわてて、チョコレートを近くの自転車のかごにかくした。
よし! ぼくは、また走り出した。
あとは、ぼくが がんばって逃げないといけない。
「おれ、チョコレートなんてもってないぞ! そいつ、うそつきだ!」
テツヤが、ぼくを追いかけてきた。ぼくは、いっしょうけんめい走った。
テツヤは、ぼくよりずっと大きい3年生だから、そのうちつかまっちゃうけど、なるべく遠くまで逃げないといけない。
息が苦しい。もうちょっとで、広場だ。何とか、広場まで・・・。