風とウメボシ(2/2)

文・結城紀子  

それから、3しゅう間がたった。
日ざしは、ギラギラして夏の本番だ。
野きゅうのれんしゅうから帰ってきたら、にわに大きなザルがおいてあった。
その上に、まっ赤になったウメがのっかっていた。
お母さんがあとで入れた赤ジソもある。
はたけのすみに、すてるじゅんびをしているみたいだった。

「あら、フウ、おかえりなさい」
「ウメ、しっぱいしちゃったの? すてちゃうの?」
「だいじょうぶよ。はじめてなのに、うまくいってるわ」
お母さんが、ポイっとウメを口に入れて食べた。
ドキドキした。でもすぐ、ぼくも口にポイっと入れてみた。
「すっぱーい。しょっぱーい」
きゅーっと、口がとんがった。ちゃんとウメボシのあじだ。

「このまま3日間、おひさまと夜の風に当てるのよ」
ウメはだんだん、シワシワになっていった。
さいごの夜、ぼくは、にわに出てみた。
さあっと、風がTシャツをとおりぬけた。すずしい。
細くて長いケムリが、風にのっかって、ながれている。げんかんの、かとりせんこうだ。

ぼくは、そっと、ザルをのぞいてみた。
「たいへんだ! ウメが、ぬれてるよ!」
細かい水のつぶつぶが、シワシワのウメにくっついていた。

結城紀子 について

(ゆうきのりこ) 岩手県三陸沿岸出身。中学生時代、注意散漫な生徒だったため、担任より授業中の様子をマンガで描いて毎日提出するよう命じられる。学生時代は、東洋大学アイスホッケー新聞を発行。その後、地域の子育てマップ等にて、4コママンガやイラストを発表。2005年より童話創作を始め今に至る。季節風同人、河童の会同人、日本児童文芸家協会会員。カウンセラーと福祉主事の草鞋も履いている。