気がつくと、彼女はテレビでも人気の若手女優になっていた。それなのに、変装までして、奏多の店に通い続けてくれた。
奏多と女優が恋仲になるのに、時間はかからなかった。
それを知った瑠衣は、静かに身を引いた。騒ぎもせず、怒りもせず。
「あいつは、そういう女なんだ。もしかしたら、はなから、オレのことなんか、どうでもよかったのかもしれないな」
瑠衣を忘れ、仕事に邁進する奏多は、たいやき屋をレストランへと拡大した。
チェーン店にして、ネットショップも立ち上げた。
短期間で欲張り過ぎたのだろう、奏多の意気込みとは反比例、経営は難しくなるばかり。口コミ人気も長くは続かなかった。
女優はさっさとスポンサーを鞍替え。
よくある話だろうが、すっからかんの現実だけが目の前に残った。