「また、たいやき屋を始めようかなぁ」
一人だって、なんとか生きていけるさ、と古いたいやき作りの道具を、押し入れから出してくると、いつかの幸福な日に、瑠衣からもらった本物の鯛おみくじが、一緒にしまってあった。
「あれ? 二個ある・・・」
赤とピンクの鯛がいた。ピンクのおみくじは「凶」で、「なにが大切なのか見極めて進め」というようなことが書いてあった。
瑠衣はきっと、先に自分用の「大吉」を引いたんだろう。
奏多のために引いた鯛が、あんまりな内容だったので、自分のと取り換えてくれたんだ。
「なにが大切かーーー」
今頃わかったって、遅いよな、神様。奏多は泣き笑いしながら、新しい、マジメな人生のスタートを自分に誓った。