いすから去った王子(7/7)

文・伊藤由美   絵・伊藤耀

北の王の話

それから、1年ほどたった、ある日、お城にワタリガラスの王子が、ふたたび、やって来ました。
「なんじゃと!」
これを聞いた王様がおこったの何のって!
「今さら、何の用じゃ⁉ さっさとおいかえせ! いや、待て。ここへ通せ。やつの言い訳を聞いてやろう。場合によっては、わしのこの手で、首をはねてやろうぞ!」
というわけで、久しぶりに、ワタリガラスの王子が、王様と王女の前に立ちました。

あの99日間に味わった苦しみは、一生消えることのない、みにくいしみや、深いしわになって、王子の顔にきざまれていました。
けれども、それは、王子の顔を、以前より、ずっと、気高いものにしていました。
頭ごなしに、がみがみ、しかりつけてやろうと構えていた王様は、ワタリガラスの王子の堂々としたものごしに、つい、気後れしてしまいました。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井県福井市在住。 『指輪物語』大好きのトールキアン。その上にトレッキー(「スター・トレック」ファン)でシャーロキアン(「シャーロック・ホームズ」ファン)と、世界3大オタクをカバーしている。

伊藤耀 について

(いとう ひかる)1992年福井県福井市生まれ。仁愛大学人間学部心理学科卒。いつもはウサギばかり描いているが、ときどき、母親の童話に挿絵を描いている。福井市在住。創作工房伽藍で勉強中。