エルとくるみとソラ(2/7)

文・七ツ樹七香  

結局、くるみの家には犬が一頭やってくることになった。「ソラ」という名前の犬だという。
ゴールデン・レトリーバーのざっ種で、金色のきらきらした長い毛を持っていて、とても楽しそうなひとみをしているのだそうだ。

「その目がね、すごくエルににてると思ったんだ」
そう話すお父さんは楽しそうだ。
ソラはミックス犬だからゴールデン・レトリーバーとちょっとちがってピンと立った耳をしているという。それがソラのチャームポイントらしい。

「ソラはボール遊びが好きらしい」
「へぇ、そうなの! エルも好きだったわよねえ」
ソラのことを話すお父さんとお母さんはとても楽しそうで、少しだけくるみも笑う。けれど、あわててまゆをぎゅっとよせてこわい顔を作った。くるみは犬がキライなのだ。

七ツ樹七香 について

(ななつきななか)熊本県在住 会社員勤務を経てフリーライター・(アマチュア)作家 新紀元社WEBサイト パンタポルタで記事・コラムを執筆するかたわら、WEBで小説を発表。公募活動にも力を入れる。『ピイのとんだ空』で日本動物児童文学賞 優秀賞。熊本県民文芸賞では小説部門を二年連続受賞。本賞で2019年に第1席を獲得した『ラスト・オテモヤン』は熊本日日新聞に全10回連載され好評を博す。本作は作品集収録とともに朗読CD化、熊本県内数カ所の図書館で視聴可能。 ほか、西の正倉院 みさと文学賞 佳作、集英社WEBマガジンコバルト がんばるorがんばらない女性小説賞 大賞など。 児童文学から一般文芸まではば広く手がけている。動物が大好き。犬と小鳥と暮らしている。著書を持つのが夢。