エルとくるみとソラ(2/7)

文・七ツ樹七香  

ソラがくるみの家にきて三日がたった。
ソラも少しはくるみの家になれてきたようだった。でもくるみは、まだソラと仲良くしてはいない。いつもツンとすましている。犬のことはキライなのだから、当然だ。
それなのに、その日くるみはゆめを見た。

犬がいるゆめだ。ゆめの中のくるみは、満面の笑みだった。
『エル〜! 大好きだよっ、だあいすきっ』
ゴールデンレトリーバーの大きなせなかに両うでで抱きついて、くるみはやわらかい首の毛に鼻をうずめる。シャンプーしたばかりのエルはシャボンのいいにおいがした。じゃれ合うくるみとエルを見て、お母さんが声をかける。

『くるみはエルと仲良しねえ』
『うん、エルはね。わたしがうれしいのも、かなしいのもわかるんだよ。もしかしたら、お母さんよりわかるかも!』
『え〜! そうなの。くやしいなぁ。エルはすごいねえ』

そうすると、エルはほこらしそうに胸をはる。くるみにもお母さんにも「あなたの味方だよ」と、いつもエルのしっぽはごきげんだ。
『エルは、くるみが赤ちゃんの時からいつもそばにいたし、くるみが泣いたらすぐに知らせに来てくれてたんだよ。お姉ちゃんのつもりなんじゃない?』
『えー、もうわたしがお姉ちゃんだよ。ねえ、エル?』
きらきらした黒い目をのぞきこむと、エルはまるで笑っているかのように目を細める。

七ツ樹七香 について

(ななつきななか)熊本県在住 会社員勤務を経てフリーライター・(アマチュア)作家 新紀元社WEBサイト パンタポルタで記事・コラムを執筆するかたわら、WEBで小説を発表。公募活動にも力を入れる。『ピイのとんだ空』で日本動物児童文学賞 優秀賞。熊本県民文芸賞では小説部門を二年連続受賞。本賞で2019年に第1席を獲得した『ラスト・オテモヤン』は熊本日日新聞に全10回連載され好評を博す。本作は作品集収録とともに朗読CD化、熊本県内数カ所の図書館で視聴可能。 ほか、西の正倉院 みさと文学賞 佳作、集英社WEBマガジンコバルト がんばるorがんばらない女性小説賞 大賞など。 児童文学から一般文芸まではば広く手がけている。動物が大好き。犬と小鳥と暮らしている。著書を持つのが夢。