つなぐ(6/10)

文・藤 紫子  

「ああっ! あった! あったぞ!」
まちがいなく、おじいさんのお守りでした。
だれかが拾ってくれたのか、手すりにぶら下がっておりました。

「これはこれは! 落ちているものだとすっかり思って、下ばかり見ていたのがいけなかった」
おじいさんは、通路の床や線路などを探していたのでした。
こみあげるうれしさに涙ぐみながら、せいいっぱい早くかけよると、いとおしそうに手の平におさめました。

二重に織られた丈夫な布地の、すべすべとした手ざわり。
小さく折りたたまれた、清枝さんからの手紙の入った、わずかなふくらみ。
苦しいときも楽しいときも共に乗りこえてきた、優しい重さ。
(ああ、見つかって、本当に良かった――)
おじいさんの心は喜びでふくらみました。

藤 紫子 について

(ふじのゆかりこ) 札幌市生まれ。札幌市在住。季節風会員。小樽絵本・児童文学研究センター正会員。12年ほど町の図書館員をしていました。子ども向けのお話と好き勝手な詩(https://ameblo.jp/savetheearthgardian/entry-12601778794.html)を書いています。自然・ドライブ・博物館・棟方志功氏の作品・源氏物語・本(本なら問題集でも!)が好き。