「ああっ! あった! あったぞ!」
まちがいなく、おじいさんのお守りでした。
だれかが拾ってくれたのか、手すりにぶら下がっておりました。
「これはこれは! 落ちているものだとすっかり思って、下ばかり見ていたのがいけなかった」
おじいさんは、通路の床や線路などを探していたのでした。
こみあげるうれしさに涙ぐみながら、せいいっぱい早くかけよると、いとおしそうに手の平におさめました。
二重に織られた丈夫な布地の、すべすべとした手ざわり。
小さく折りたたまれた、清枝さんからの手紙の入った、わずかなふくらみ。
苦しいときも楽しいときも共に乗りこえてきた、優しい重さ。
(ああ、見つかって、本当に良かった――)
おじいさんの心は喜びでふくらみました。