ふしぎなぴりーこぱん(1/7)

文と絵・エンプティ・オーブン

・・・でかでかと?
「このハンバーガー、こんなに大きかったっけ?」
まじまじと見つめていると、やっぱりいつもとちがうってことがすぐわかった。

なぜなら、ハンバーガーが、だんだん大きくなってきたんだもの。
しかも、時計からとび出してきたんだもの。
あんまりいきおいよく出てきたものだから、ハンバーガーはバラバラになっておちてきた。
思わずあんこちゃんはハンバーガーをうけとめようと、手をのばした。
ギリギリのところで、いちばん上のパンだけはキャッチできた。

すると、そのパンが言った。
「ナイスキャッチで、ありがとう! キャッチのついでに、もとにもどしてくれない?」
あんこちゃんはびっくりして、パンをおとしそうになってしまった。

「おっとあぶない! きをつけて」
パンはくりくりおめめをくるくる回しながら言った。
よく見るとちょっとかわいいかも、とあんこちゃんは思った。
あんこちゃんは言われた通り、ハンバーガーにもどしてあげた。

下のパンにハンバーグ、レタスをかさねて、その上に、かわいいパンをのっけたら、ほら、すっかりもとどおり!
と思ったら。もとにもどしてあげたのに、ハンバーガーったら、
「ちがう、ちがうよ、あんこちゃん!」
とおこりだしちゃった。

「え、ちがうの?ちゃんとお肉もレタスも、入ってるけど」
そしたら、ハンバーガーはこんなことを言い出した。
「まだたりない!レタスのうえに、とうがらし!」

とうがらし? そんなのあったかしら。
「ふつうハンバーガーに、とうがらしなんて入ってないもん」
せっかくなおしてあげたのに。あんこちゃんがちょっとムッとして言うと、
「ぴりーこぱんにははいってるの! ぴりっとからしがきいてないと、ぴりーこぱんじゃないでしょ!」

当たり前のことでしょ、といったかんじでハンバーガーが答えた。
でもあんこちゃんは、『ぴりーこぱん』なんて、聞いたことがない。
「ぴりーこぱんって何?」
「ぴりーこぱんは、ぴりーこぱんだよ」
きいてみたけど、よくわからなかった。

エンプティ・オーブン について

1985年埼玉県生まれ。子供のころから本が好きで、自分でも絵本を作ったり、マンガを描いていました。二児の母になってからは、わが子に読み聞かせるための絵本を作ってきました。小学校の読み聞かせボランティアにも参加しています。娘がが小学生になるのを機に、童話を書き始めました。たくさんの人に楽しんでもらえるお話を書きたいです。