すーっ。
はーっ。
ぼくは、気持ちを整える。
「黒岩さん、ぼくたちは、これで」
かがみこみ、チャッピーを抱き上げようとした時だった。
「どうしたもんだろう?」
上から声が、降ってきた。
「その声は・・・」
と見ると、山野辺さんが、立っていた。
何度も眠っている自分の体に入ろうと、チャレンジしてみたそうだ。
「でも、戻れないそうです」
怪訝そうに首をかしげる黒岩さんに、山野辺さんの状況を伝え、解決策を考える。
「・・・強い想いがあったから、体から魂が抜けたのだとしたら、」
と、ぼくは考える。
「うん、うん」と、目を輝かせる山野辺さん。
「だとしたら?」と、身を乗り出す黒岩さん。
「体に戻るのにも、なんらかの強い想いが必要なのではないでしょうか?」
「一理、あるかも」
「ああ、なるほど」
「山野辺さん、なにか念じてみてください」
「うん、たとえば?」
「それは名案だな!」
「たとえば、たとえば、黒岩さんと一緒に花火を見たい、とか?」
「て、テレるじゃないか」
ほほを染める黒岩さんの横、
「やってみよう」
山野辺さんは、必死で念じているようだったが、
「だ、だめだ・・・。このデカい黒岩金太と一緒に花火を見る映像が結べない・・・」
ふーっと息を吐き出した。
「大丈夫ですか、山野辺さん。あ、あの、黒岩さん、気にすることは、ないと思います」
「失敗なのか?」
がっくりと、肩を落とす黒岩さん。
しかし、1秒もしないうち肩がびくんと跳ね上がる。
「幸太くん、ほら、あそこに! ・・・噂をすれば影って諺もあなどれないな。昔の人はたいしたものだ」