エルとくるみとソラ(2/7)

文・七ツ樹七香  

けれどエルは、くるみたちが帰る前に息を引き取った。
家に帰ってすぐにお母さんが話してくれた。
『エルは、お空に旅立ったんだよ』
くるみの頭から、その言葉がはなれない。大泣きするくるみを、その日ずっとお父さんとお母さんはなぐさめてくれた。

でもその夜、ふたりだって泣いていたのをくるみは知っている。くるみが出かけたがったばっかりに、最後までいっしょにいることができなかった。
くるみのせいだ。

「エルッ!」
自分のさけびで苦しいゆめから覚めたくるみは、目を強くこすった。
「ほら、いやなんだもん。いつか、いなくなっちゃうんだから」
ぽつり、とくるみはつぶやいた。

七ツ樹七香 について

(ななつきななか)熊本県出身。「ピイのとんだ空」で第30回日本動物児童文学賞優秀賞。 「ラスト・オテモヤン」で第41回熊本県民文芸賞小説部門一席を受賞。熊本日日新聞に全10回連載され好評を博す。本作は朗読CD化、熊本県内数カ所の図書館で視聴可能。 ほか、第1回西の正倉院みさと文学賞 佳作、集英社WEBマガジンコバルト がんばるorがんばらない女性小説賞大賞、第16回深大寺恋物語 調布市長賞など。 共著に『謎解きホームルーム2』『恐怖文庫』『感動文庫』(いずれも新星出版社)動物が好き。犬と小鳥と暮らしている。