「ソラはボール遊びが好きなんでしょう?」
「そう。好きな人にあのボール持っていって『投げて!』っておねだりするんだって。ソラはミックス犬だけど、やっぱりレトリーバーの血も強くうけついでるんだろうねえ」
「ソラは水の中とかも、好きかもね。昔は、レトリーバーって、りょうに行ったときに水鳥の回収をしてたって本に書いてあったもん」
「すごい。やっぱり、くるみはくわしいね」
お母さんは感心してパチパチと手をたたいた。
くるみが発した「ソラ」という自分の名前を聞きつけると、ソラはぷるっと耳をふるわせて起き上がった。そして、ダイニングテーブルでおやつを食べているくるみの足元にやってきて、なにか言いたそうにしっぽをふる。
ソラは、この家に来た時からくるみにとてもきょうみがあるようで、どうにかコミュニケーションを取ろうとしていた。しかし、残念ながら失敗が続いている。
「くるみ、少し遊んであげたら?」
ムシされて、ちょっとがっかりしかかっているソラが気のどくで、お母さんが声をかけるとくるみはきっぱりと言った。
「ううん、しないよ」
「くるみ・・・。でも」
「好きになったら、悲しいでしょ」
くるみはそれだけ言うと食器をかたづけて、二階の自分の部屋にもどっていった。
ソラはつまらなそうに一度だけスンと鼻を鳴らし、またクッションにもどってゴロンと横になった。