「あれ? 結那ちゃん?」
そのとき、結那の後ろから、ほんわかと温かな声が聞こえました。
包みこむような声にふりむくと、そこにはアンジさんがいました。
「あっ・・・アンジ・・・」
ホッとした結那は、そのまま泣き出してしまいました。
「どうした? あれ? もしかしてお使いたのまれたのかい? ここのカラアゲ売り切れ早いからなぁ。こまったねぇ」
オレンジ色の光のような声音が心にしみ込んで、結那は涙が止まりません。
「そうだなぁ・・・う~ん。よしっ! ここほどおいしくはないけど、おじさんがカラアゲ作ろうか? それ持って帰ったら結那ちゃんもにんむ完了ってことで。って、お母さんにはばれちゃうね。でも、許してくれると思うよ。今日は、おじさんがお母さん引きとめちゃったしね」
アンジさんは、しゃがみこんで結那を見つめます。
お日さまのようなアンジさんの笑顔からふりそそぐ温かさが、しおれてしまった結那の心に力をそそぎます。
結那の心に、少しずつ光が広がっていきました。
光は熱となり、勇気をつくりだしました。
「ち、ちがうの。・・・お母さん、お母さんが」
結那は、しゃくりあげながら必死に言葉をつむぎました。
しかし、上手く話すことができません。
自分でも、どう説明したらいいのか、わからないのです。
下を向いた結那の目に、とっさに持って出たお出かけバッグがうつりました。