『おばあちゃんのにわ』
ジョーダン・スコット 文
シドニー・スミス 絵
原田 勝 訳
偕成社
2023年7月刊
◆大事な食べ物をこぼさずに食べなさい
今回ご紹介する絵本は、カナダの詩人ジョーダン・スコットが、祖母と過ごした子ども時代を描いた作品です。
お話は、幼いジョーダン・スコット(以下ぼく)が父の運転する車で祖母の家へ預けられる場面から始まります。
ぼくのおばあちゃんは、元はニワトリ小屋だった家に一人で住んでいました。第二次世界大戦後、ポーランドからカナダへ移民としてやってきたため英語があまり上手に話せません。そこで、ぼくとは身ぶりや手ぶり、表情を通しておばあちゃんと意思疎通をすることが日常になっていました。
おばあちゃんはぼくが学校へ行く前に必ず同じ朝食を作ってくれます。それは、大きなお椀にバターのたっぷり入ったオートミール。ピクルス、キャベツ、庭で採れたビーツが添えられたもの。
ぼくがオートミールをこぼすとおばあちゃんはさっと拾い上げ、それにキスをしてお椀に戻し、ぼくのほっぺたを軽くつまむのでした。まるで、「大事な食べ物をこぼさずに食べなさい」と言っているかのように。
また雨の日、おばあちゃんはぼくを学校へ送っていく道の途中、地面の上で行き場を失ったミミズたちを拾い集めます。そして、それを庭に持ち帰り、野菜や果樹の横にまいて土をかぶせておくのです。
それをそばで見ていたぼくは「なぜそんなことをするの?」と尋ねると、おばあちゃんは雨でぬらした指でぼくの手のひらのすじを1本ずつなぞります。ミミズが土の中にたくさん住んでいると、水や空気がたくさん入って養分が行き渡り、野菜や果樹が良く育つという昔ながらの知恵を教えていたのでした。(次ページに続く)