9 深まる謎
凍てついた夜道を歩き、帰り着くと、門の前で猿神さんが、足を止めた。
「怪しい・・・、アキラ見てみろ、この足跡を」
「ずんずん続いてますね」
猿神さんと同じくらいありそうな、大きな足跡が、玄関まで、規則正しく並んでいる。
堂々としているだけに、オレは、怪しい気配は感じなかった。
「怪し過ぎる。鍵も開いている」
けれど、家の持ち主の猿神さんがこう言うからには、用心はするべきだろう。
体に、サッと緊張が走る。
「ほら」
猿神さんは、入口の戸を細く開けて見せ、今度は、体が入る幅までそろそろと開け、滑り込むように中に入った。
オレも、するりと滑り込む。
玄関先に、靴は、ない。
猿神さんが、忍び足で、チャッピーのためにつけておいた家の明かりを、消してゆく。
「家の中に暗闇を作ってしまえば、もしも侵入者が潜んでいても、暗視スコープゴーグルを装着しているワシたちの方が、有利に動けるはずだ。だろ?」
猿神さんにしては、とても良い思いつきだ。
「ですね! とっても、有利です!」
オレたちが、グータッチ、交し合った時だった。
「なにが、だろ? ですか、猿神先輩」
声がした。
「なんてマヌケな人たちなんだ! 家の中に暗闇を作るなら、声もひそめるべきじゃないですか?」
現れたのは、猿神さんよりさらに大きい人だった。