アーカイブ

電子書籍になりました!

当サイトで公開した絵本『キャラメル バンザイ』が、マイナビ出版より電子書籍として発売となりました。
Amazonはじめ電子書籍ストアで購入ができます。パソコン、スマートフォン、タブレットで読むことができます。
ぜひご一読を!

満月詩子・文 ゆきえの絵・絵『キャラメル バンザイ』378円
◆Amazonの購入サイトはこちらへ →『キャラメル バンザイ
駄菓子屋「しお屋」で起こる、とっても楽しい運動会。親子で読みたい、ほのぼの絵本です。
キャラメルバンザイ書影

しれいかんからもらったおかねを、レジの人にわたした。
コインがいっぱいかえってきて、おさいふは来たときよりおもたくなった。
おさいふがおもたくなったということは、おかねもちになったということだ。
気をつけてもってかえらないといけない。

エージェント4「いいか、つよし。おうちにかえるまでが、エージェントだぞ」
「うん、にいちゃん」
へんじがもとにもどってるけど、ぼくはもう、気にしなかった。

エージェントは、かえりみちも、気がぬけない。てきは、あっちこっちにいるんだ。
たとえば、すぐそこにある、たいやき屋。ここは、お店のまえにおばあちゃんがいるんだけど、このおばあちゃんが・・・。
「おや、ぼうや、きょうはひとりなの?」
「ううん、にいちゃんといっしょ」
「そうかい、おつかい、えらいねぇ」

くっ、しまった! エージェントつよしが、おばあちゃんにつかまった!
こんなふうに、つかまってしまうと、たいへんなんだ。
あのおばあちゃんは、とってもいいひとだけど、はなしがながいんだ。
このままでは、しれいかんが、まちくたびれてしまう・・・。

「おばあちゃん、きょうはぼくたち、いそがしいから、またね!」
ぼくは、つよしのてをとって、はしった。エージェントは、にげることも、たいせつなのだ。

いよいよ、スーパーについた。
おやさいに、くだもの、おこめに、おにく。いろいろなものがならんでいる。
この中から、しれいにあるものをえらんで、おかねをはらってかえるのだ。

ぼくは、しれいかんからうけとった、ひみつのメモをひらいた。
メモには、「ジャガいも タマねぎ ニンジン」とかいてある。
「さあ、このあんごうの、なぞをとくんだ。カタカナもかいてあるな・・・」
「にいちゃん、カタカナ、よめるの?」
「よめないから、あんごうというんだ。エージェントは、あんごうをとくために、あたまもはたらかせるものなんだ」

エージェント3ぼくは、カタカナはまだべんきょうちゅうだけど、ひらがなはぜんぶよめる。
メモをじっくり見て、あたまをはたらかせれば、ヒントくらいはつかめるはずだ。
「ママ・・・じゃない、しれいかんは、こんやはカレーだっていってた。だからこれは、カレーにいれるものだ、きっと」
ぼくは、かんがえながら言った。

一つめのきけんは、ぶじにのりこえた。
でも、ゆだんはできない。
二つめのきけんは、しんごうをわたってすぐそこの大きなおうちなのだ。
この大きなおうちには、おうちにまけないくらい大きな犬がいて、ぼくたちにほえるんだ。

「エージェントつよし。あのワンワンは、てきだ。みつからないように、そ~っととおるんだ」
「りょうかいしました!」
「ひとりずついくぞ。まずは、にいちゃんが・・・」
ぬきあし、さしあし・・・。
ぼくは、大きな犬がねそべっているおうちのまえを、あしおとを立てないように気をつけながらとおった。
大きなおうちの門の前をとおりすぎて、そのむこうの電信柱のかげにそっと入る・・・。ふぅ、ぶじについた。せいこうだ。

ぼくは、ゆびを2ほん立てると、クイックイッとふって、つよしに、「こい」のあいずをした。
エージェントつよしも、ぬきあし、さしあし・・・。
エージェント2ポケッ!
あぁっ! つよしが、石ころをけった!
「あ、しまった!」
おまけに、大声をだしてしまった。もうだめだ。

ワンワンワンワンワン!ワンワンワン!
「ひゃあ~~~~~~っ!」
ぼくたちは、ひめいをあげて、にげ出した。

ぼくたちは、エージェントだ。
エージェントっていうのは、ひみつのしれいをもらって、かつやくするひとのことだ。
ぼくはエージェントたかし。ようちえんのねんちょうさんだ。
それと、おとうとのエージェントつよし。あとすこしで4さいだ。

ぼくたちは今日も、しれいかんからひみつのしれいメモをうけとった。
「今日のばんごはんは、カレーにしようとおもってるの。だから、このメモにかいてあるものを、いつものスーパーで買ってきてね」
ママ・・・じゃなくて、しれいかんが言った。

「りょうかいしました!」
ぼくは、パッと手をおでこのところに上げてけいれいをしてから、エージェントつよしの手をひっぱって、はりきってうちを出た。
さくせんをせいこうさせるには、たくさんのきけんをのりこえなきゃならない。
つよしはまだ、エージェントとしては小さすぎるから、ぼくがしっかりするぞ。

「エージェントつよし、いくぞ!」
「うん、にいちゃん」
「うん、にいちゃん、じゃない!りょうかいしました、だ!」
「りょうかいしました!」

それからなんにちかたった日のことです。
「白ヘビがいるぞ」
にんげんのこえがしました。
「にんげんだ! ピヨタ、にげるぞ!」
でも、ピヨタは、そんなにはやくはしれません。
とうとう2ひきはつかまってしまいました。
《オレもおかあさんみたいに、ころされるかもしれない。でもピヨタだけはまもってやらなくちゃ》
ところが2ひきは、すぎばやしのとなりにあるじんじゃまでつれて行かれると、そこではなされたのです。
そこには、たくさんのにんげんがいました。
だからちがうんだってば④「白ヘビさまじゃ。かみさまのおつかいの白ヘビさまじゃ。ありがたや、ありがたや」
にんげんたちは、ニョロタをおがみます。
よくじつには、あめがふりました。
ずっとあめがふらなくてこまっていたむらびとたちはおおよろこび。
さすが白へびさまだと、ますますおがむ人がふえました。
「いったい、どうなってんだい。よのなか、だれがてきで、だれがみかたかわかりゃしない」
それから、ニョロタとピヨタは、なかよくくしあわせにくらしました。
そうそう、おとなになってはねの白いニワトリになったピヨタは
「ぼく、やっぱりおかあさんのこどもだったんだね! おかあさんとおんなじ白いいろになったよ」と、おおよろこびしたことも、みなさんにはごほうこくしておきましょう。

そのとき、ニョロタは、草のかげからキツネがヒヨコをねらっているのに、気がつきました。
「あぶない!」
ニョロタはキツネの足にかみつきました。
キツネはびっくりして、にげていきました。
そのとき、ヒヨコが目をさましました。
「あっ、おかあさん!」
「な、なんだよ」
ヒヨコは、じっとニョロタを見つめながら、かなしそうにききました。
「おかあさん、ぼくが、おかあさんみたいに白くなくてきいろいから、ぼくのこときらいなの? それとも、おかあさんみたいにほそくなくて、まんまるだからきらいなの?」
「そ、そんなこたあねえよ」
ニョロタは、小さいころのことをおもいだしました。
からだが白いとみんなにいじめられていたニョロタでしたが、おかあさんひとりだけは、いつもニョロタのみかたでした。どんなときでも、ニョロタを、まもってくれました。
「ニョロタ、おまえはみんなとちがういろをしていて、いじめられることがあるかもしれない。でも、ニョロタ、どんないろでもニョロタはニョロタ。おかあさんのたいせつなニョロタなんだよ。つよくなりなさい。そして、じぶんにじしんをもって生きなさい」
そのおかあさんも、にんげんのいえにしのびこみ、手のりインコをたべたのが見つかって、ころされてしまいました。
サイズ変換_写本 -だからちがうんだってば③ 「ねえ、おかあさん、ぼくのこときらい?」
ニョロタはヒヨコのこえにはっとしました。
「きらいじゃねえよ。おまえとオレじゃあ、かたちもいろもちがうがな」
「うわぁい。おかあさん、ぼくのこと、きらいじゃなかったんだ!」
「だけど、オレは、おまえのおかあさんじゃない。ニョロタってんだ」
「ニョロタおかあさん」
「だから、オレさまは・・・。まっ、いっか。オレがこいつのおかあさんになってやっても」
「じゃあ、ピヨタ、行くぞ」
「えっ、ぼくのなまえ? おかあさんとなんだかにてるね」
ピヨタは、うれしそうにニョロタのあとをついてあるきはじめました。

「おかあさん、まってぇ」
ヒヨコはトコトコおいかけます。
「だ、だから、オレさまは、おまえのおかあさんじゃないってんの」
ニョロニョロニョロと、ニョロタはにげます。
トコトコ ニョロニョロ トコトコ ニョロニョロ
「おかあさーん」
「おまえなあ、いいかげんにしろよ。なんどもいってるだろう。オレさまはおまえのおかあさんなんかじゃない!」
おかあさんをおいかけるのにひっしで、ヒヨコには、そんなニョロタのこえなんてきこえません。
ニョロタはどんどんにげました。
そうして、もう、ここまではついてきていないだろうと、うしろをふりむきました。
「げっ」
ヒヨコはあきらめることなく、すこしはなれながらもおいかけてきています。
「まったく、しぶといやろうだぜ。そうだ、ここならさすがのあいつも見つけられないだろう」
だからちがうんだってば②ニョロタは、木の上にスルスルスルとのぼりました。
しばらくして、ハアハアいいながら、ヒヨコがやってきました。
「おかあさーん。おかあさーん。どこへいっちゃったのー」
ヒヨコは、おかあさんがきえたあたりをひっしでさがしましたが、見つかりません。
「うえーん。おかあさーん」
そのうち、ひよこはなきつかれて、ねむってしまいました。
「やっとあきらめてくれたぜ」
ニョロタは、ほっとしました。
だけど、ほっとしてうれしかったはずなのに、ヒヨコのことが気になってしかたありません。
「オレさま、どうしちゃったんだろう」
しばらくしても、ヒヨコがピクリともうごかないので、ニョロタはしんぱいになってきました。
「まさか、しんじゃいねえだろうな」
スルスルスル
ニョロタが木からおりて、ヒヨコのそばまできてみると、スースーねいきがきこえてきました。
「なんだこいつ。しんぱいさせやがって」
そういいながらも、ニョロタはほっとしました。
「かわいいねがおしてやがるぜ」

「シメシメ。おいしそうなタマゴだなあ。おやのいないあいだにいただくとするか」
あおだいしょうのニョロタは、したなめずりしました。
ほかのあおだいしょうは、こいウグイスいろをしているのに、ニョロタはまっ白ないろをして生まれてきました。
そのために、きょうだいや、なかまから、へんなやつといわれ、バカにされ、いじめられてそだってきたのです。
「もう、こんなところとは、おさらばして、おいらはひとりで生きていくさ」
そうひとりごとをいいながら、ニョロニョロはっているときに、ぐうぜん見つけたとりのタマゴでした。
「いち、にぃ、さん、しぃ、ご。おっ、5こもあるぞ。これだけたべりゃあ、おなかもいっぱいになるだろう」
ニョロタは、1こずつあじわいながらタマゴをたべました。
「やっぱりタマゴはさいこうだねえ」
4このタマゴをたべおわり、さあ、いよいよさいごの5こ目をたべようとした、そのときです。
パリン
タマゴがわれて、ピヨピヨいいながら、きいろのヒヨコが生まれてきました。
だからちがうんだってば①
「うわぁ、な、な、なんだあ」
ニョロタはびっくりして、大きくあけていた口をとじるのもわすれて、あとずさりしました。
「ピヨ。あっ、おかあさん、こんにちは」
ヒヨコは目のまえにいたのが、ニョロタだったので、すっかりニョロタをおかあさんだとおもってしまったのです。
「よ、よせやい! オレさまはおまえのおかあさんなんかじゃないやい。だいいちオレさまは男だ。おとうさんってことはあっても、おかあさんってことがあるかい。いや、まてまて、おとうさんってことだってあるはずないじゃないか」
きゅうにヒヨコが生まれただけでもびっくりだったのに、そのヒヨコからおかあさんなんていわれたものですから、ニョロタはすっかりあせってしまいました。
ヒヨコをパクリとたべてもよかったのに、ニョロタはそこからあわててにげ出しました。

それからすうかげつがたちました。
雨にふられたり、お日さまにてらされたりして、リーフスキーたちは、だんだんボロボロになって、小さなはへんになっていきました。
リーフスキーが、土にかえる日がきました。
そのとき、とおくから、さくらの木のおかあさんのこえがきこえてきました。
「リーフスキーや、おまえをたべて、虫はげん気に大きくなれたのよ。おまえのあなは、くんしょうですよ」
リーフスキーは、えいえんのねむりにつくとちゅうで、そのこえをききました。
そうして、にっこりほほえみました。
リーフスキー4a
「おまえたちは、土になるけれども、わたしはねっこから、そのえいようをもらうのよ。そうして、またあたらしいいのちをうみだすの。生きものはみんな、だれかのやくにたっているのよ」
けれども、そのこえは、もうリーフスキーにはきこえませんでした。
春になりました。
さくらには、またあたらしいはっぱが生まれています。
リーフスキーは、きっとそのどこかにいるはずです。