王様は、そんな心の内を見せまいと、ことさら、いばった調子で、言いました。
「エヘン。今さら、何の用だ。そうか、あやまろうというのだな。だがな、お前がわしと王女に加えたむごい仕打ちは、どんなにあやまったところで、許されるものではないぞ」
「いえ、あやまりに来たのではありません」
王子は、すずしい顔で、言いました。
「私は、どうして、私がいすにすわるようになったか、そしてまた、せっかく、99日間もがまんしたのに、どうして、そこから去ったのか、その理由を話しにきたのです。きっと、あなた方は、とても知りたいだろうと思ったものですから」
王様が何かを言う前に、
「ええ、ぜひ、お聞かせください」
と、王女が言いました。
こんなことは、今まで、なかったことなので、みんな、おどろいて、王女の顔を見ました。王女の目は、きらきら、かがやいて、熱心に、若者に注がれています。
「ふしぎだねえ。いつもはお人形のように、王様の言いなりのひめさまが、初めて、人間らしい口をきいたよ」
長年、お城に仕える者たちは、こそこそ、言い合いました。けれども、
「では、お話いたしましょう」
と、王子が、王女に向かって、にっこりした時から、だれもが、王子の言葉だけに、耳をかたむけました。