1 ぴりーこぱんが、やってきた
あんこちゃんは、ぼんやりしていた。
そろそろ学校に行く時間。
となりのへやでは、お母さんが朝のしたくをする音が聞こえている。
でも今日はもうちょっと、家にいたい気分。
「そろそろお母さんに、学校に行きなさいって言われちゃうだろうなあ・・・」
あんこちゃんは、この町に引っこしてきたばっかりだ。
新しい小学校では、だれともあそばないで、お絵かきをしてすごしている。
知らない子とお話するのははずかしいんだもの。
お友だちがいれば、本当はおにごっことか、かくれんぼをしてあそびたいんだけど。
「今日はお兄ちゃんもいっしょじゃないし・・・」
お兄ちゃんはクラブの『朝れん』で、先に学校に行ってしまった。
そういう日はお母さんがいっしょに行ってくれるけど、お母さんには校門までしかついて来てもらえない。
そこから先はあんこちゃん一人になってしまうから、お兄ちゃんがいない日は心細いのだ。
「学校行かないで、ハートちゃんとあそんでたいよ」
あんこちゃんは、つくえの上のノートを見た。
ノートの中では、さっきあんこちゃんがかいたハートちゃんがわらっていた。
ハートちゃんは、あんこちゃんが小さいころに考えたキャラクター。
ハートの体に、ほそい手足がついている。絵の中で、あんこちゃんとハートちゃんはいろいろなぼうけんをしているのだ。
「あーあ、学校に行く時間に、ならなければいいのに」
あんこちゃんは、へやの時計を見上げた。毎日見ているこの時計。まんなかに、ハンバーガーの絵がでかでかとかいてある。