バイバイパンダパン(3/4)

文と絵・満月詩子

結那は、持っていたバッグからアンジさんにもらったパンを取り出しました。
「お母さんが、このパンみたいになっちゃう!」
結那は、クマのパンをアンジさんにわたしました。
お父さんが帰って来た時、ぎゅっとにぎりしめたのでしょう。
クマの顔は、まぶたの辺りがふくらみ、ほほが引っ込んだようになっています。

パンを見たアンジさんは、しばらくだまっていましたが、必死な結那の顔を見つめると、「わかった」といきをはきました。
「結那ちゃん、ゆっくり深呼吸しよう。いい? いきすって・・・よし、フーってはいて」

結那はいきといっしょに、あせりが外に出ていくのを感じます。
「ひとつだけ聞いていいかい? お母さんをクマパンにしているのは、だれ?」
「・・・お父さん・・・」
アンジさんの真剣な目に、結那は消え入りそうな声で答えました。

満月 詩子 について

(みつき うたこ) 佐賀県生まれ、在住。学校図書館勤務を経て、福祉関係の仕事に就く。現在は、仕事以外に、ボランティア活動なども行いながら、絵本や児童書の創作を続けている。日本児童ペンクラブ、日本児童文芸家協会会員。 2012年、『その先の青空』で、第15回つばさ賞、佳作に入選 おもな著作に、『さよなら、ぼくのひみつ』【『さよなら、ぼくのひみつ』(国土社)に収録】。『たまごになっちゃった?!』【佐賀県DV総合対策センター発行】、『あかいはな」』【『虹の糸でんわ』(銀の鈴社)に収録】などがある。