北の王の話
それから、1年ほどたった、ある日、お城にワタリガラスの王子が、ふたたび、やって来ました。
「なんじゃと!」
これを聞いた王様がおこったの何のって!
「今さら、何の用じゃ⁉ さっさとおいかえせ! いや、待て。ここへ通せ。やつの言い訳を聞いてやろう。場合によっては、わしのこの手で、首をはねてやろうぞ!」
というわけで、久しぶりに、ワタリガラスの王子が、王様と王女の前に立ちました。
あの99日間に味わった苦しみは、一生消えることのない、みにくいしみや、深いしわになって、王子の顔にきざまれていました。
けれども、それは、王子の顔を、以前より、ずっと、気高いものにしていました。
頭ごなしに、がみがみ、しかりつけてやろうと構えていた王様は、ワタリガラスの王子の堂々としたものごしに、つい、気後れしてしまいました。