そのようすを、そらにうかぶくもが、見ていました。
「ぼくにできることはないかなあ。そうだ! きたかぜくんにたのんでみよう!」
それからなん日かたった、ある日のこと。
ピュールリ、ピュルルル~ ピュールリ、ピュルルル~
おひるすぎから、きたかぜがふきました。
きたかぜは、リーフスキーに、はなしかけました。
「ねえ、きみ。ぼくとおどらないかい?」
「えっ、ぼくなんてきたなくて、あなまであいているから、じょうずにおどれないよ」
「ほんとにそうかな?」
きたかぜが、リーフスキーをもちあげてくれると、リーフスキーのからだは、しぜんにくるくるまわりはじめました。
「うわあ、なんてきもちいいんだろう。きたかぜさん、ダンスってたのしいね」
「きっときみは、あなあきはっぱだから、じょうずにおどれるんだよ」
「えっ、そうなの?」
「ほら、きみのあなをぼくがとおるよ」
きたかぜが、リーフスキーのあなをとおると、リーフスキーは、もっとはやくクルクルまわりました。
「ぼく、このダンス、あのうさぎの女の子に見せてあげたいなあ」
「よし、じゃあ、女の子のところへいこう!」
そのころ、うさぎの女の子はいつものように、ベッドから外をながめていました。
すると、まどのむこうで、1まいのはっぱがまわっているではありませんか。
クールリ、クルクル クールリ、クルクル
「ママ、見て! はっぱさんが、ダンスしているわ!」
女の子はおもわず、ベッドからおきて、まどぎわまであるいていきました。
ねたきりだった女の子が、あるけたのです!
きたかぜが、きれいなはっぱたちもつれてきて、まどの外は、まるではっぱたちのぶとうかいのよう。
リーフスキーは、女の子のために、いっしょうけんめいおどりました。
「すごいわ! あなあきはっぱさんが、いちばんじょうずよ!」
女の子も、リーフスキーのまねをして、クルルルとまわります。
ピンクのパジャマがふわりとまって、リーフスキーとおんなの子がいっしょにダンスをしているようでした。
「きみ、おどるのが一ばんじょうずだね。これまでばかにしてごめんね」
いっしょにかぜとダンスをしている、きれいなおちばたちがいいました。
「さあ、そろそろもどろうか」
きたかぜはそういうと、おちばたちを、もとのさくらの木の下につれもどしました。
「よかった。うさぎのおんなの子の足がなおって」
リーフスキーは、女の子があしたから、ようちえんにいけるといいなあとおもいながら、そのよるは、つかれてぐっすりねむりました。
アーカイブ
ある、はれた日のあさのことです。
ねこのおかあさんが、森の小みちをとおりかかりました。
「まあ、なんてきれいなおちばなんでしょう。この赤やきいろのおちばでネックレスをつくってやったら、ミイコ、きっとよろこぶわ」
そうして、赤やきいろ、オレンジ色のきれいなおちばを、ちゃいろのかいものかごにいれていきました。
おひるになると、大きなふくろをもって、日の出ようちえんの、くまのえんちょうせんせいがやってきました。
シャカシャカ ギュウギュウ シャカシャカ ギュウギュウ
えんちょうせんせいは、ふくろをあけると、おちばをたくさんつめこみました。
「さあ、これで、子どもたちと、おいしいやきいもがつくれるぞ。みんなよろこぶだろうなぁ」
そうして、にこにこしながら、ふくらんだふくろをかかえて、かえっていきました。
夕がたになると、かぜにふかれて、のこったおちばが、みちのはしっこに、たまりました。
小学校からかえるとちゅうの、1ぴきの子ぎつねが、その上をあるきました。
シャリシュリシャララ シャリシュリシャララ
なんておもしろい音なんでしょう!
それをきいた、ほかの子ぎつねたちも、はしってきました。
「うわあ、なんだか、おもしろそう!」
そうして、みんなでおちばの上を音をたてながら、かえっていきます。
シャリシュリシャララ シャリシュリシャララ
まるで楽団が森を通っているようでした。
子ぎつねたちが、いなくなってしまうと、森の小みちは、またしずかになりました。
「みんな、たのしそうだったね」
「赤やきいろのおちばたちは、きれいなネックレスになったのかなあ。」
「わたしはブローチになりたいわ」
のこったきれいないろのおちばたちは、じぶんたちがどうなるのか、たのしみにしています。
「ぼくは、あながあいているし、きたないちゃいろだから、だれのやくにもたてないんだ・・・」
リーフスキーは、ためいきをつきました。
なみだがポロンとこぼれました。
日の出ようちえんのうらに、大きな1ぽんのさくらの木がありました。
あきになり、みどりいろのはっぱたちは、いろをかえました。
きいろいはっぱ。赤いはっぱ。金いろにかがやくはっぱまであります。
「まあ、あなたの赤いいろ、なんてすてきなの。まるでお日さまみたい」
「きみのきいろいいろこそ、お月さまみたいできれいだよ」
はっぱたちは、みんなでほめあいます。
そんな中で、1まいだけ、ちゃいろのあなあきはっぱがありました。リーフスキーです。
「見てみろよ、あのいろ。きたないねえ」
「あなもあいてるよ。みっともないったらありゃしない」
きれいないろのはっぱたちは、ひそひそとリーフスキーのわる口をいいます。
リーフスキーは、いつもひとりぼっちでした。
あるとき、リーフスキーは、うさぎの女の子が、ベッドからそとをながめているのを見つけました。
このあいだ、ようちえんのブランコからおちて、足をケガした女の子です。
「あの子のおうちは、あそこだったんだ」
それからまい日、リーフスキーは、うさぎの女の子をながめていました。
「またきょうも、あの子が見ているよ。はやく足がよくなって、ようちえんにかよえるといいなあ」
ピュール、ピュルルル~
あるあさ、つめたいかぜがふきました。
はらはら、ひらひら
はっぱたちは、ひらひらと、じめんにまいおりました。
森の小みちは、たくさんのいろのおちばでいっぱいです。
まるで、いろとりどりの毛糸であんだふとんがかかっているよう。
リーフスキーは、みんなとすこしはなれたところに、ひらりとおちました。
「えだについていたときは、とおくまで見えてたのしかったねえ」
「しゃくとり虫さんがきたときは、くすぐったかったよね」
「しらない町のはなしをしてくれた小とりさんたちは、げん気にしているかしら」
きれいないろのおちばたちは、まい日、そんなはなしをしながら、えだについていたころのことを、なつかしんでいました。
「あのうさぎのおんなの子の足は、なおったかなあ」
リーフスキーだけは、ひとり、うさぎの女の子をしんぱいするのでした。
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「ぼく」が体験した不思議で心温まるお話。
「ムニャ・・・かえるくん・・・んん?」
こうだいくんが めを さまします。
「もうふが ぴょんぴょんしたみたい」
こうだいくんは もうふを みてびっくり。
「わあ! かえるくんが いっぱいだ!」
しろいもうふが かえるの もうふに だいへんしん。
おおきいかえる ちいさいかえる ほそながかえるも ふたごの かえるも みんな みんな もうふの なかで たのしそう。
こうだいくんも にっこにこ。
「あれ? きみは かばんの かえるくん?」
あらまあ。
パジャマと おようふくと ずぼんと くつしたと てさげかばんの かえるたちも みんないっしょに はいっちゃって もうふの なかは ぎゅう ぎゅう ぎゅう。
かえるたちは おおあわて。
こうだいくんに みつからないように そっと ぴょぴょんと とびだして もとのところに もどりました。
「おひるね おわり! おもらし してない! かえるの もうふ だーいすき!」
こうだいくんは げんきいっぱい おきました。
かえるたちも にっこにこ。ちいさな こえで こたえます。
「ぼくたちも だーいすきケロ」
こうだいくんは かえるの もうふを ぎゅっとしてから きれいに たたみました。
それから かえるたちは どうしたかって?
もちろん こっそり おうちにかえって、もとの もうふに もどりましたよ。
Special Thanks to ILLUST BOX/GATAG/フリー素材集 壱/カエル
かえるたちは ほいくえんの おへやを とびだして こうえんの よこを とおりすぎ
ぴょんぴょん ぴょぴょん
ぴょんぴょん ぴょぴょん
こうだいくんの おうちの ベランダまで やってきました。
おひさまで すっかり かわいた かえるの もうふの したで とびはねます。
「こうだいくんが さびしそうケロ」
「ほいくえんに きてケロン!」
「もう おもらししないってケロヨ」
もうふの なかの かえるたち それをみて
「ぼくたちだって さびしかったケロ!」
「よしっ! こうだいくんの ところへいくケロ!」
「いっしょに おひるねしたいケロロン!」
「いくケロ ケロ ケロ!」
「ケロ ケーロ!」
みんな うれしそうに とびだしました。
ぴょんぴょん ぴょぴょん
ぴょんぴょん ぴょぴょん
かえるたちは ベランダから みちへ、みちから こうえんの よこを とおって ほいくえんに つきました。
ぴょんぴょん ぴょぴょん
おひるねしている こうだいくんの ところに あつまると かなしそうな ねごとが きこえます。
「ムニャムニャ かえるくん・・・」
「あいにきたケロ!」
「こうだいくん だいすきケロ」
かえるたちは、つぎから つぎへ しろいもうふに とびこみました。
ほいくえんの おひるねのじかんです。
「しろいもうふ いやだな」
こうだいくんは ほしてある もうふを おもいだしました。
「だけど がまんする。ごめんね かえるの もうふ。もう、おもらししないから」
でも やっぱり さびしくて ちょっと ぐずぐずしながら ねむりました。
おひるねちゅうの こうだいくんが かなしそうに ねごとを いいました。
「かえるくん ムニャムニャ かえるくん ムニャ・・・」
すると、どこからか ちいさいこえが。
「こうだいくん さびしそうケロ」
おひるねパジャマの かえるが しゃべっています。
「かえるくん ムニャ・・・」
また こうだいくんの ねごとです。
くつしたの ふたごの かえるが こそこそ いいました。
「そうだ! いいこと おもいついたケロン」
「おもいついたケロン」
「かえるくん・・・」
こうだいくんは もうふの なかで ちいさくなりました。
「みんな いくケロヨ!」
てさげかばんの かえるが かばんの たなから とびだしました。
「オッケーロ!」
「ケロケーロ!」
あれあれ あれれ。
こうだいくんの パジャマから ちいさな かえるが ぴょん ぴょん。
くつしたからは ふたごの かえる、おようふくと ずぼんから ほそなががえるが ぴょぴょん!
みんな ぴょんぴょん ぴょぴょんと とびだしました。
こうだいくんは かえるが だいすき。
おようふくも ずぼんも くつしたも てさげかばんも パジャマだって みーんな かえるのもよう。
こうだいくんが にこにこしてると かえるたちも わらっているみたい。
「あかちゃんの ときから つかってる もうふが かえるの もようだから かえるが すきに なったのかな」
ママが わらいます。
ほいくえんに いくときは もちろん たいせつな かえるの もうふを もっていきます。
「いっしょに おひるね きもちいいもん」
だけど きのう ほいくえんの おひるねで おもらし しちゃった こうだいくん。
ぬれた もうふの かえるたちは かなしい かおに みえました。
かえるの もうふは せんたくちゅう。
おうちの ベランダに ほして あります。
「きょうは しろい もうふを もっていってね」
ほいくえんの じゅんびを しながら ママが いいました。
こうだいくんは しょんぼり。
「しろい もうふは いやだな」
「かえるの もうふも こうだいと ひるねできないから さびしそうね」
ママが いいました。
ベランダの もうふから ポタリ ポタリ みずが おちました。
そのころ、さんばしでは、男の人たちがつりをしていました。
なんと、タロウごいは、その中の、せのたかい男の人に、つりあげられてしまったのです!
タロウごいをつり上げた男の人はびっくり。
「なんだ、こりゃ。あれれ、こいのぼりじゃないか。」
ゴミがひっかかったと思った男の人は、タロウごいをすてようとして、そのもように気がつきました。
ひろげてみると、かいじゅうのえがかいてあります。
「うちのたろうが、大すきでいつもかいている、かいじゅうのえだ。もしかしたら、これはたろうのつくったこいのぼりかもしれないぞ」
男の人は、その日つったさなかといっしょに、タロウごいをクーラーボックスに入れて、うちへかえりました。
「おとうさん、おかえりなさい! きょうはどんなおさかなをつってきたの?」
「せかいでたったいっぴきの、すてきなさかなをつってきたよ」
「うわあ、早く見せて!」
クーラーボックスから出てきたさかなを見て、たろうはびっくり!
「ぼくの、いなくなったこいのぼりだ!」
たろうは、川のそばをとおるときに、じぶんのこいのぼりを見るのがたのしみでした。
でも、なんにちかまえから、いなくなってしまって、がっかりしていたのです。
お父さんは、タロウごいをきれいにあらって、ドライヤーでかわかしました。
「こんなにあちこちやぶれちゃって。すごいぼうけん、してきたんだね」
たろうは、やぶれたところをセロハンテープでくっつけます。
そのあと、お父さんがひもをつけて、タロウごいを、ものほしざおにくくりつけました。
タロウごいは、かぜをいっぱいうけて、ひらひらおよぎます。
〈あちこちいけなくても、やっぱりおいらは、かぜの中をおよぐのがいいなあ〉
ところが、とつぜんスーパーのゴミぶくろにからまってしまい、うごけなくなってしまったのです。
「たすけてくれぇ」
そのこえをきいて、きてくれたのは、さっきたすけてあげた、あの小さな赤いさかなでした。
「こんどは、わたしがたすけてあげるばんだわ」
赤いさかなは、ツンツンつついて、からまったスーパーのふくろをはずしてくれました。
「たすけてくれてありがとう」
タロウごいは、ほっとして、おれいをいいました。
2ひきはそのあと、しばらくいっしょにおよぎました。
川の中には、いろいろなゴミがおちています。ながぐつやあきかん。ふかいところには、なんとじてんしゃまでしずんでいます。
「川の中って、ずいぶんきたないんだね。上から見ていたときには、わからなかったけど」
「おじいちゃんがいってたけど、むかしはきれいなすんだ水だったんですって。でも、今は、にんげんがゴミをなげこむから、こんなにきたなくなったの。わたしもいちどでいいから、きれいな川でおよいでみたいわ」
小さな赤いさかなは、じょうずにゴミをよけながらおよぎますが、タロウごいはペットボトルやあきかんにぶつかります。
ゴミにぶつかっているうちに、タロウごいは、だんだんボロボロになっていきました。
およぐ力もなくなって、水にながされていくだけです。
「そろそろ、わたし、いかなくちゃ。わたしは川でしか生きられないから、ここから先は行けないの。気をつけてね。さようなら」
そういうと、小さな赤いさかなは行ってしまいました。
川の水と、うみの水がまじりはじめ、ついに川は、うみになりました。
タロウごいも、ゴミといっしょに、うみにながれて行きました。
「うわぁ、しょっぱい!」